吉田恒の「為替を予想する」

FXアカデミア学長・吉田恒の為替分析レポート、FXセミナーと、吉田的予想メソッドに便利なツールを紹介

《まとめ》北野一氏プレミアムナイツセミナー(2014.3.26)


もうすぐ1ヶ月近く経って今さらですが、3月26日(水)に受講した、北野一さん(バークレイズ証券)の講義まとめ記事です。相場的には、まだ間に合うかなって思って(^^;

相場で気分が乗らなかったりとか(それは今も変わらないけれど・・・)、初めて北野さんのセミナーを受講して、いろんなことを思って、何を書こうか迷っている間に時間が経ってしまったり、私の中では書かない理由はいろいろとあったのですが、今朝ウォーキングをしながら北野さんのお話をまた聴き、今朝の吉田恒先生のツイートを見て、書きたい意欲が湧いてきました。
セミナースタイルは、吉田恒先生とビックリするほど似ていらっしゃいます。演壇より前に出て、歩きながら、そして会場全体を見ながら話すスタイル、少しでも難しそうな用語には説明を加えてくださるところ、わかりやすく、おもしろい喩え、過去の同じ局面と比較しての常識的判断、ストーリーのあるお話の展開・・・。
そしてこれも、まずは冒頭まとめから。

今日の結論


「アベノミクス相場“否定”第1幕」は終わり、これから第2幕。「アベノミクス相場“否定”第1幕」とは、「アベノミクス相場」を“実質的に否定”

“実質的に否定”⇒米株に比べて、日本株は相対的に上がっていない。
「TS倍率(日米相対株価)」は、日銀が“質的量的緩和(異次元の政策)”を始める前である2013年2月まで戻ってきている(米はテーパリングを始めているにも関わらず)。

第2幕は、現実に株が下がり、円高になることによって、相対的だけでなく、誰から見てもアベノミクス効果が否定されることになる。その鍵を握るのは米の株であり景気、あるいは中国


普通、「アベノミクス」で「第1幕」とか「第2幕」というと、為替で言えば「第2幕」は、105円を抜けて120円、130円にドル高・円安になっていく過程のことを指すと思うのですが、北野さんの場合はそうではなく、「誰から見てもアベノミクス効果が否定される」過程のことを「第2幕」とおっしゃっています。それだけでも結構衝撃的な「冒頭まとめ」じゃないですか?

実質的に否定されたアベノミクス相場


「TS倍率(日米相対株価)」は、日本の実質金利ではなく、米の実質金利と一緒に動いている。(“異次元の緩和”で日本の実質金利は下がったが、「TS倍率」は上がっていない)

では株高、円安の主因は?
2011-2012年、欧州債務危機の最中、安全資産を求めて米国債が買われ、米の実質金利は米の実態(雇用・物価)以上に下がっていた。(FEDが頑張ったから金利が下がっていたのではない)

2012年秋以降、さすがに“売られすぎ”だったイタリアやスペインの国債が買われだし、“買われすぎ”だった米国債が売られ、米実質金利が上がり、米金利と連動する日本株も上がり、ドル高円安に。

日本だけの文脈で考えると「日銀やアベノミクスの効果で株高、円安に」となるが、地球規模で考えると「100年に1度の危機」からの正常化が日本にも影響を与えてきていた、と考えられる。


実は熟しているか?


1995年:2.5兆円の介入で円安に。⇒“ミスター円”
2003−2004年:“ギネス級”50兆円の円売介入をしても円高に。

結果に影響を与えるのに大切なことは、「介入をすること」でなく、「どういう局面であるか」ということ。異常値から戻る(平均回帰が起こる)局面では効果がある。(柿の実は、熟していれば、何もしなくても落ちるが、まだ青ければ、いくら木を揺すっても落ちない)

足元局面では、外国人投資家は「GPIFはいつ、株や外貨建資産を増やすのか?」について尋ねてくる。つまり、外国人投資家はGPIFが株を買うようになれば、上がると思っている。

しかしGPIFの全資産は100兆円ほど。50兆円も株や外貨建資産を増やせない。たとえ50兆円を投入しても上がらないということは先の例からも明らか。株が上がるかどうかは局面による。
つまり、「今、割高なのか?割安なのか?」を真剣に考えることに意味がある。


足元はどんな局面か?


「実質実効為替レート」は超円安
実質実効為替レート:日本の輸出企業の競争力を表す指数。教科書的にも実証的にも、トレンドがなく、「行き過ぎたら元に戻る」というのが期待できる。

購買力平価と実勢レートは、円安の上限まで乖離
購買力平価:「基準点、日本物価、米物価」の3つの値で求める。それぞれ何を使うかによってどんな数字も出せるので、購買力平価の値自体には何も意味がない。
意味があるのは、「1つの基準で愚直に求めた購買力平価と実勢レートとの間にどれくらいの乖離があるか」ということだけ。

直近の似た局面は2007年
円安長期化を見込んだ日本企業の、工場の国内回帰が加速した。
これ以上円安が進まず失敗、倒産する会社も出た
2014年も工場の国内回帰が進みつつある・・・


吉田恒先生が教えてくださる資料やお話と、少しずつは違いますが、吉田恒先生も北野さんも同じことをおっしゃっているということがよくわかります。



日本株とドル円相場の強い相関の背景


吉田恒先生のお話の中で「日本株とドル円は“双子の関係”」という言葉がよく出てきますが、北野さんはそれについてこんな風に解説してくださいました。

「円高だから株が下がった」「株が上がったからリスクオンで円安」
というように、見る側の立場によって言うことが逆になるものはどちらも間違っている

1970年→1989年:《ドル円》360円→120円(円高)、《日経平均》5000円→4万円(株高)
⇒「株高・円安」「株安・円高」は、本来的には因果関係はない。今はたまたま、相関が深い

「米株と日本株には因果関係」
「米長期金利とドル円にも因果関係(為替レートは金利差で決まる)」

⇒2000年代以降「米株と米長期金利に正の相関」が生まれ、日本の金利がゼロであることによって、「日本株とドル円にも正の相関」が生まれた。


本当はこういうことだったのね、というのがわると同時に、吉田恒先生が個人投資家向けに、なるべく簡潔にわかりやすく解説してくださっているんだな、ということもわかります。

2014年、鍵を握る米経済、米景気は?


米長期金利で考える
2013年、米長期金利は、水準は低いものの1.7%から3.0%まで1%以上上昇

過去のパターンからすると普通、1年で1%以上上昇すると、翌年ネガティブな影響が出てくると考えられる。(IMFは米の実質GDP成長率が加速すると予想しているが・・・金利敏感な住宅着工件数は前年比マイナスになってきている)

日本のベースアップで考える
前回、久しぶりのベースアップをしたのは2006年。
2006年と今と共通点は?
(1)月例経済報告(内閣府)の景況判断「景気は緩やかに拡大している」
(2)米、景気の底から50ヶ月経過

つまり、「さすがに米が50ヶ月も景気を拡大すると、日本でも賃金が上がる」という循環的な話。「みんなが上げるから上げる」という時には、ビジネスサイクルはピークアウトの可能性。


北野さんも2.7%という米金利は低すぎる、4%程度が適当だろうと思っていらっしゃるとのことですが、そうは言いながらも、景気減速懸念が広がって、2.5%を割ってきたらサプライズなので、注意して見ていく必要がある、とのことです。

もう1つ注意すべきは中国


「シャドーバンキング」「地方政府の債務漬け」など、問題があることはみんながわかっているが、世界経済に影響を及ぼすタイミングは誰にもわからない

2005年以降、基本的には人民元高が続いている。ただし緩急はある。
人民元高のスピードを緩めるのは、「VIX指数(恐怖指数)」が高まっている時(=リーマンショック時、欧州債務危機時)。
⇒「中国流金融緩和」

足元、過去の危機時と同じくらいか、それ以上に、人民元高のスピードを緩めている
⇒「VIX指数」は知らないが、中国だけが知っている危機か?!

今年に入って、「TS倍率(日米相対株価)」と「人民元相場」は連動している。
人民元は「新・恐怖指数」か?!


「きっかけは?」は愚問


中国のお話の中でも、「局面を見ることが大事」ということをこんな風にお話されています。

「きっかけは何なんですか?」とよく聞かれますが、“きっかけ”なんて、聞く段階で間違った質問だと思うんです。

“きっかけ”聞いて、人より先に動いて儲けようという発想だと思うが、自分だけわかるような“きっかけ”なんて、“きっかけ”とは言わない。

それよりも大事なのは、「部屋に酸素が充満していたら誰が何やっても爆発する」、そういう状況を見るのか、見ないのかが大事。


吉田恒先生の会場セミナーでも、稀にある質問タイムで、「きっかけは何ですか?」と聞いていらっしゃる方がいますし、確かにいつ始まるのか、教えてほしい気持ちは私も常々ありますが、「地道な状況判断をし、その時を待つ」、これしかないのですね!師匠!

日本株、これからの展望


「日米相対株価」から言っても、「日米相対PER」から言っても、下がるところまで下がったので、日本株は米株に比べて、相対的にはアウトパフォームすることになると思う。

ただしそれは、「米株は上がるけれど、日本株はもっと上がる」ではなく、「日本の株は下がるけど、米株はもっと下がる」という形でのアウトパフォームになるのではないか?



復習と関連リンク


まだあと15分程度、“デフレの真犯人”についてのお話をされています。

間違った利益分配を続けてきたせいで、賃金が下がり続け、デフレが長引いてきた。アベノミクスのお陰で、株高・円安になっていると多くの人が思っている今はまだ、企業も政府の要請に従ってベースアップが実現したが、これから始まる「アベノミクス相場“否定”第2幕」によって、賃金を上げる理由がなくなり、再びデフレに向かうのか、ではどうすれば良いのか、詳しくは北野さんの著書を読んでみてください。

★最新著書のレビュー


★北野一さんの著書3冊。吉田恒先生からおすすめ本としてご紹介いただいています。


★吉田恒先生による北野一さんのご紹介−マーケットウォッチ(2014/3/24)




セミナーの録画視聴と資料ダウンロード
http://www.jikiden.info/jmsb/m2j/0170JeUwPyAkqST4434/
(北野一さんのセミナーは、48分30秒頃から吉田恒先生からのご紹介、本編は50分頃からです。)